「第5次千葉県男女共同参画計画」をジェンダー平等をめざす実効ある計画にするための申し入れ

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「第5次千葉県男女共同参画計画」をジェンダー平等をめざす実効ある計画にするための申し入れ

2021年1月14日、日本共産党千葉県委員会と同千葉県議団の連名で「第5次千葉県男女共同参画計画」策定にあたって、ジェンダー平等をめざす実効ある計画とするよう申し入れを行いました。全文は以下の通りです。

2021年1月14日

千葉県知事 森田健作 様

ジェンダ一平等の千葉県をめざす実効ある計画に
「第5次千葉県男女共同参画計画」策定にあたっての申し入れ

日本共産党千葉県委員会  
日本共産党千葉県議会議員団

 千葉県は、男女共同参画社会基本法第14条に基づき「第5次千葉県男女共同参画計画」(以下、5次計画)の策定をすすめています。同計画は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」に基づく推進計画にも位置付けられ、その期間は、2021年度から2025年度までの5年間としています。
 近年、ジェンダー(社会的・文化的につくられた性差)平等をめざす世論と行動がひろがり、一定の前進が見られるとはいえ日本社会の現状はまだまだ立ち遅れています。わが国のジェンダーギャップ指数は121位と、「後進国」であり、千葉県は、いまだに全国で唯一、男女共同参画条例が制定されていません。
 とりわけ、新型コロナウイルス感染拡大によって、県内でも多くの女性が仕事を失い、家事・育児負担の増大、DVなど様々な困難に直面し、女性の自殺が増えるなど胸が痛む深刻な状況です。
 そこで、第5次計画策定にあたり、第4次計画の総括をふまえつつ、次の基本的立場を堅持した実効ある計画となることが求められています。その第1は、新型コロナウイルス感染拡大が浮き彫りにしている非正規雇用が大半をしめ、より多くの家族のケアを担う女性の厳しい状況の打開につながる計画とすることです。第2は、政府が批准している「国連女性差別撤廃条約」の国際水準や、国連サミットで採択された「SDGs(持続可能な開発目標)」のジェンダー平等、日本国憲法を土台にすえ、パブリックコメントも含む女性らの切実な願いに正面から応え、ジェンダー平等実現に大きく寄与するものにすることです。
 そのために以下の事項について、必要な補強・修正などを講じるよう申し入れます。

申し入れ事項

1.第5次計画の「目標」について、「ジェンダー平等」を明記したものにしてください。
 5次計画原案の目標「男女が共に認め合い、支えあい、元気な千葉の実現を目指します」について、県は「元気な千葉」は現知事のキャッチフレーズと説明しています。しかし、法定計画である5次計画の目標と知事のキャッチフレーズは、まったく性格の異なるものであり、懇話会委員からも異論が出たように抽象的かつきわめて不見識と云わざるを得ません。いま重要なことは、「日本国憲法(「個人の尊重」「法の下の平等」)や、男女共同参画基本法の基本理念「男女の人権の尊重」を踏まえ、国際社会もとりくんでいる「SDGs」の開発目標である「ジェンダー平等の実現」という明確な目標をうちたて、その実現に本気で向かう県の決意を示すことです。

①目標は、たとえば「男女が共に尊重しあい、ジェンダー平等で人権や多様性が大切にされる、千葉の実現をめざします」などに修正してください。
②第5次計画の全体を通して、「人権」「誰もが自分らしく」を太く打ち出してください。

2.政策・意思決定の場に「男女半々」の目標を掲げてください。
 第4次千葉県計画では、本県審議会等の女性委員の比率を、2020(令和2)年度までに40%として掲げましたが昨年4月1日時点は30.4%で、全国47都道府県中44位と立ち遅れたままです。
 また国家公務員の課長職の女性比率は5.9%、千葉県でも知事部局の課長相当職以上に占める女性の割合は7.1%と、依然として低い到達に留まっています。

①県審議会への女性の登用を現状の30.4%から40%に早急にひきあげてください。
②県庁知事部局課長職以上に占める女性比率を昨年4月1日7.1%から大幅に引き上げてください。(東京都16.8%、神奈川県12.7%)
③政治分野での男女平等を前進させるために、家庭との両立支援、セクシャルハラスメント防止、議会や選挙制度の民主的改革などの世論喚起や条件を整えるとりくみを加えてください。

3.雇用におけるジェンダー差別をなくし、男女ともに人間らしく働き続けられる労働のルールの確立の必要性を強調し、県としてのとりくみを強めてください。
 コロナ危機で女性労働者が多くを占めるパート・派遣の雇い止めが一気に広がり全国でもとりわけ女性への影響が深刻で、失業・生活苦が女性を直撃しています。
 しかし県は、その実態すら把握しておらず、5次計画原案には対策は見当たりません。
 いわゆる男女の賃金格差についても、女性職員給与は男性の約8割と記述されていますが、非正規を含めた分析や対策はありません。
 一方、国の第5次計画では、批判をうけて女性の非正規化と男女格差の拡大が「問題」と明記され、賃金格差の解消へ「女性が多い職種における賃金の実態等について、調査分析を行う」との記述が盛り込まれました。非正規労働は一時的・臨時的な仕事に限定し、雇用は正規を原則とすることが必要です。
 あわせて、中小企業支援と一体に全国一律最低賃金を1500円に引き上げや、女性の賃金を抜本的に引き上げることが重要です。
 さらに均等待遇原則、同一価値労働同一賃金、パワハラやセクハラなどのハラスメント禁止などをILO条約をはじめとする国際基準で法制化することが急がれます。

①県として、企業にたいして、日常的な業務に携わる女性従業員は、原則として正規雇用とするよう直接働きかけ、男女別賃金の公表を求めてください。
②男女間 の雇用差別や賃金格差、昇進差別などをなくすため、県独自に積極的な取り組みをすすめてください。県内における男女の賃金格差(非正規含め)について、とくに女性が多い職種における賃金の実態等について、県独自の調査・分析を行ってください。
③家族的責任をもつ労働者の時間外労働や深夜労働、転勤などを制限し、男女ともに家庭生活時間が保障されるよう関係機関との連携を強めてください。労働ル一ルを確立することや、特に時間外労働については一日あたりの時間規制に踏み出すよう、国や関係機関にはらきかけると同時に、県職員については徹底してください。
④均等待遇原則、同一価値労働同一賃金、パワハラやセクハラなどのハラスメント禁止を企業に要請し、知事部局や公営企業、教育現場、警察に徹底してください。
⑤仕事と子育てが両立できるよう、育児休暇の拡充、保育所と学童保育の整備など社会的条件を整えてください。
⑥県職場における男性の育児休業取得率は、18.8%(中長期目標50%)と低く、昨年3月千葉県仕事子育て両立支援プランに関するアンケートの結果等をふまえ、取得しづらい要因をあきらかにし、対策を講じてください。
⑦女性の再就職支援については、「千葉県ジョブサポートセンター」の子育てと再就職をワンストップで相談できる窓口をさらに拡充し、各市町村と連携、周知する体制をつくってください。

4.ジェンダー平等の視点から、医療、介護、保育などケア労働、公衆衛生を担う保健所の大幅増員と待遇改善をすすめてください。
 新型コロナの感染拡大による自粛・休業要請のもとでも仕事を休まず、社会の基盤を支え、命を守ってきたケア労働や、保健所などは、女性が多く働いています。この分野を拡充し、大切にする柱を5次計画に据えるべきです。
 ところが本県の場合、そもそも医療、介護、福祉分野における従事者数が、他県との比較でも人口比で全国最低クラスで、たとえば人口10万あたり医療施設に従事する看護師・准看護師数45位、保健師数42位、等々で、大幅増員は喫緊の課題です。コロナ感染拡大による県保健所の疲弊は、1994年以降の法改悪を契機に国・県が大幅に保健所を減らし職員数も減らしてきたことに起因しており、改善は急務です。

①県も含めた公的責任において、医療、介護、障害福祉分野の抜本的な増員と待遇改善を行うために、夜勤回数や妊婦の勤務を制限し、患者・利用者へのケアを十分に行える職員配置とするよう国や関係機関に働きかけてください。
②県も含めた公的責任で保育・学童保育の分野では、職員の抜本的な処遇改善を進めるとともに、感染症対策の観点からも、低すぎる職員配置基準・面積基準を抜本的に引上げてください。
③コロナ感染防止、自殺予防、難病・精神障害支援、DV、食品衛生など多岐に渡り地域の公衆衛生を担う保健師を大幅に増員し、当面は人口20万人あたり一か所の保健所を増設してください。

5.女性や子どもに対するあらゆる暴力の根絶と健康支援をすすめてください。①コロナ禍で増加のDV被害者の相談を担う県男女共同参画センターや千葉県女性サポ一トセンターを充実させ、県が減らした県女性サポ一トセンタ一の一時保護室は増設してください。DV被害者が緊急避難する民間団体についての実態把握と財政的支援をおこなってください。
②児童虐待防止のため、県児童相談所のさらなる新規増設や、老朽化している施設(柏、銚子)の建替えを早急に具体化し、職員体制は抜本的に増やしてください。
③2年間で相談が倍増している性犯罪被害の支援を行う「千葉性暴力被害者ワンストップ支援センター」の機能を365日体制へ抜本的に強化し、抜本的な財政支援を行うとともに、民間支援団体等との連携をつよめてください。
④性暴力・DV被害者に対する警察の対応を改善するため、性犯罪専門部署・担当官の設置と研修プログラムの充実を図って下さい。
⑤すべての女性が費用の心配なく、毎年の健康診断を受けることができるように、婦人科検診等の拡充など妊娠・出産にかかわる費用の負担軽減を盛り込んでください。
⑥リプロダクティブ・ヘルス&ライツ(性と生殖に関する健康・権利)を保障するため、安全な妊娠・出産のための周産期医療体制の充実とともに、避妊薬と緊急避妊薬の安価な入手や、中絶薬の早期認可など中絶医療を国際水準まで高めるとりくみをすすめてください。10代含めた妊娠相談窓口を身近なものに充実させてください。
⑦「子どもの権利」として、「国際セクシャリティー教育ガイダンス」にもとづき、科学的で、子どもの年齢・発達に即した包括的性教育を、公教育に導入してください。

6.深刻化している女性の貧困や困難の解消へ、社会保障の充実と賃上げをすすめてください。
①県内でも今年は前年比1.5倍増(8月は2.5倍)女性の自殺や、コロナ禍でますます打撃を受けているひとり親家庭の深刻な実態を把握し、財政支援もふくめた総合的な相談サポ一ト体制を拡充してください。
②「自助、共助」の名で福祉・年金・社会保障制度の改悪・負担増を進めるのではなく、どのような生き方を選んでも安心して暮らせる制度を目指してください。
③税と社会保障は、応能負担の原則に立ち、無収入や低収入の人への軽減措置、課税最低限の引き上げ、最低保障年金制度の確立、生活保護の拡充など、総合的・段階的な制度設計で、労働者・国民負担とならないよう、県としてのとりくみを強めてください。

7.女性差別撤廃条約と憲法の立場で、あらゆる分野でのジェンダ一平等を貫き通してください。
①中小・零細業者における家族の「自家労賃」を経費として認めず、家族従業者の人権を認めない所得税法第56条の廃止めざし、県として独自に、県内における家族従事者の実態調査を行い公表してください。
②農林水産業における家族従業者の人権と尊厳を守るとりくみをすすめてください。
③コロナ禍、給付金が世帯主に届くため、夫に渡りもらえない女性がいたということは大問題であり、戦前の「家父長制」という考え方を改めて、それを引き継いだ「世帯主」の制度の廃止をめざしてください。
④選択的夫婦別姓制度の実現をめざすこと強調してください。
⑤民法改正による同性婚を認めることをめざすとともに、県職員が同性パートナーと事実上の結婚生活を送っている場合、異性のカップル(事実婚を含む)と同様の休暇、各種手当、福利厚生が受けられる制度をつくってください。
⑥性的少数者(LGBTなど)に対する差別解消を明確に打ち出してください。公共サービス利用や県営住宅入居にあたって、差別されない措置を講じてください。
⑦性的少数者(LGBTなど)が自分らしく生きられる社会の実現をめざし、啓発・啓蒙、教育に力を入れてください。
⑧災害時の避難所生活における女性の人権を守り、ジェンダー平等の視点を盛込んだガイドラインを作成してください。
⑨県立高校の生徒の人権を侵害する頭髪・服装指導を直ちにやめ、誰もが自分らしく生活できるよう、生徒の意見を反映した「校則」「生徒心得」にあらためるとともに、国連「子どもの権利条約」を県内のすべての子どもに普及してください。

8. ジェンダー平等を目指す県条例の速やかな制定と十分な予算措置を講じてください。

以上

要望書を手渡す(左より)みわ由美県議、加藤英雄県議、さいとう和子前衆議院議員、
浅野ふみ子党県副委員長、岡田幸子前県議